【若干ネタバレあり】2019夏・テレビ朝日系木曜ドラマ『サイン』にみる、リメイク作品の限界

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「備忘録」と称した例の記事を進めたいところですが、このドラマの感想を忘れず書いておきたいと思ったので、先に書きます。今にも忘れちゃいそうなので。

 

 

概要

『サインー法医学者 柚木貴志の事件ー』

2019年夏クールのテレビ朝日系木曜21時台の連続ドラマ。

出演:大森南朋、飯豊まりえ、森川葵松雪泰子仲村トオル西田敏行 他

原作:2011年に韓国で大ヒットしたドラマ『サイン』

 

あらすじ

厚生労働省警察庁共同管轄の日本法医学研究院に所属する解剖医・柚木貴志(大森南朋)が、新人解剖医・中園景(飯豊まりえ)とコンビを組み、あらゆる事件の真相を追い求め、真実を隠蔽しようとする権力に立ち向かっていく物語。

 

個人的感想

及第点

良かった点は、「いつもと違う」ドラマだったという点。

大ヒットドラマシリーズが数ある枠で、あえてシリーズ物ではない新作品を作るというのは、勇気が必要だったと思う。

その姿勢はとても評価できるし、ぜひまた、「いつもの」ではないものに挑戦してほしい。

 

反省点

とにかく全体がぼやけていて薄い。

物語の背景、登場人物たちの背景、関係性すべてが薄味。

 

まず、舞台である「日本法医学研究院」。

韓国版では、実際に存在する「国立科学捜査研究院」というところが舞台だったそうだが、日本にはないので、架空の舞台にしたとのこと。

これが実に良くない。

いや、架空の舞台がダメなのではない。

架空の舞台なら、その「物語の世界線」に根付かせなくてはならないのだ。

正確にいうと、現代の日本が舞台のベースにあるというなら、現実にあってもおかしくない・むしろありそうな設定の舞台を作り上げなくてはならないのだ。そこの詰めが非常に甘い。全てが架空ならどうでもいいことなのだけど。

 

甘い舞台を中心に、そこのトップの座を狙う伊達明義(仲村トオル)。彼がなぜそこに執着するのか、今一つ掴めないまま物語は進む。恩師である兵頭邦昭(西田敏行)を自殺に追い込んでまで、彼は何を守ろうとしたのか。最終回までみた今現在も、さっぱりわからない。一体何だったのだろう。

 

初回に匂わせた女性・島崎楓(森川葵)が、最終章にも深く関わってくるというのは、連続ドラマあるある手法なのでそこは別にいいのだが、彼女が最終回で柚木に繰り返し言い続ける

「永士がどうやって死んだか、知りたい?」

というセリフは、解剖してんだから、「HOW」はわかってるんだよ、ぼけっていう話。知りたいのは、「WHY」。ただ、そもそも一解剖医がなぜ捜査しているのか、その前の時間帯の「某女性科捜研職員(法医学担当)」もそうだからなのか…?

 

 

改善点

まず、兵頭先生との話を前半であんなにひっぱり続けることはなかったのではないか。

兵頭先生がいない世界線からのスタートでも、話は十分進められたのでは。

 

そして、主演の年齢を少し下げる。

もう少し設定を下げめでも良かったのではないか。(韓国版のパッケージだけみたらあんな雰囲気だったから、似た俳優さんをチョイスしたのかもしれないけれど…)

大森さんがすべて悪いわけではないのだが、仲村トオルさんとの上下関係がわかりづらい。仲村トオルさんの方が、実年齢少し上なのだが、並ぶとほぼ同世代に見え、ドラマ内では同期?くらいに思って見ていたら、だいぶ年齢差があるらしいという描写があり、大混乱。

主演の年齢を少し下げるだけで、絶対的な上下関係みたいなものが画面だけでも伝わりやすいのではないか。

新人解剖医の飯豊まりえと、師弟愛のような、恋愛感情のような薄めの甘酸っぱさを醸すなら下げめの方がしっくりくる。

主演の年齢をさげれば、元カノ・和泉千聖松雪泰子)の年齢も少し下げざるをえなくなり、やり手の、上昇志向が強い女性刑事という絵がそれなりに出来上がったのではないか。

そうすれば、若手捜査官・高橋紀理人(高杉真宙)の「一生ついていきます!」という最後のセリフがそれなりに効いてきたのではないか。

そんなそもそも論がぐるぐると回ってしまう。

 

パワハラ大王」と異名がつくほどの暴君が、新人を認め、デレるのが回想のみって…。

あぁ、なんと勿体無い。

ここぞというときに、柚木が一人で中園の実家に行く後ろ姿だけでもインサートしてくれていたら、印象はまったく違うものになったのに。

 

柚木が殺害され、その様子を警察、法医研の面々でみているとき、隠しカメラの中の映像(アップ)は絶対に不要だった。

隠しカメラの映像を見る面々と、隠しカメラの映像のみで良かった。

どうしても森川葵のアップを入れたいというのであれば、回想として楓に語らせて、そこでインサートすれば良いのだ。

 

なにより。

主人公が最終回の途中で殺害されるということは、主人公は柚木貴志ではなく、中園景だったのではないのか。

柚木が権力に立ち向かうのが物語の軸ではなく、柚木を通して成長する景の物語だったのではないか。

そう考えると、仲村トオルの暗躍も、大物然として登場した篠井英介も、木下ほうかも、なぜうっすらとした存在感だったのか、腑に落ちるのだ。

そう、中園景の成長物語には不要の人物だから。

ちょっと濃い色をつけられた背景でしかないから。

 

ただ、彼女の成長物語とするなら、第2章とされた第6話あたりからの話が最終回までひっぱられなければいけない。

彼女の妹が絡んでくるからだ。

ただそうすると、疑惑のファーストレディ、森川葵がいきてこない。

痛し痒しの状態なのである。

それはなぜか。

 

話の軸がブレているからだ。

柚木が、権力に立ち向かう話も中途半端

景を主人公にすると、いきてこない人物・話がある

そう。両方はとれないのだ。

どちらかを軸にするしかなかったのに、今回のリメイクでは、両方の話を動かしてしまった、そこが敗因だと思っている。

 

 

演出面は、そこまで気にはならなかったが、やはりというか、最終回はいろいろ無理がたたっていた。最終回直前まで、とにかくどんどん話の枝葉が広がっていったという印象は拭えなかった。 

 

まとめ

「韓国ドラマのリメイクなんて!」

と、憤る人は、きっと一定数おられるのだろう。

私は、おもしろければなんでもいいと思っているたちなので、そのあたりはどうでもいい。

ただ、契約内容の問題なのかもしれないが、そのまま置き換えるだけでOKとはいかないのが、韓国ドラマリメイクの難しいところだとは痛感している。

 

韓国本国のドラマは、日本と違い、1話ごとの時間が長く、途中にCMも入らないと聞く。単純に、1時間のドラマだったら、1時間分丸々使って描けるのだ。

日本は、1時間のドラマではなく、だいたい45分程度のドラマに抑えなければならない。そして、「クール」という壁が立ちはだかる。当たれば何話でも放送して良いという本国とは、そこが圧倒的に違う。

だからこそ、リメイクにあたっては、緻密な組み立てが必要になってくるのではないか。

 

隣の国で、言語学的にもかなり近い存在だとはいっても、育んできた歴史や、生活の違い、思考方法の違い、感じ方の違いは、否応無く現代ドラマにのしかかってくる。

「国立科学捜査研究院」という物語上最も重要な存在も、名前だけ変えればハマるかと問われれば、絶対にNOなのだ。

 

日本の実写化や、リメイクが弱いのは、そのあたりの軽視が如実に出ているからだと感じている。

実写化やリメイクがすべてダメだとは言わないが、「原作(大元)により似せた格好をしていれば良作」と思ってはいないだろうか。そんなものは、コスプレして画面に映って喋っているだけで、ドラマでもなんでもない。役作りの必要もないから、役者の技量だってどうでもよいことになる。演技が上手い人がいらないわけではない。上手かろうが、下手だろうが関係ないということだ。

 

今回のテレ朝ドラマチームの挑戦は、個人的には好意的にみているのだが、次回以降はぜひ、しっかり気合を入れてつくってほしい。